【AGLAアーカイブス】アーユルヴェーダが伝える「人生の4つの目的(プルシャルタ)」とは?

AGLAアーカイブス

心と体を調える女性のためのスピリチュアルメディア『AGLA』で、とくに人気の高かったコラムを再掲する「AGLAアーカイブス」。2019年12月12日公開記事『アーユルヴェーダで手に入れる、ほんとうの健康と幸せ(連載第二回)』よりお届けします。

アーユルヴェーダの基本

アーユルヴェーダとは、今から約3000~5000年前からインドに伝わる伝承医学のことです。

サンスクリット語のアーユス(生命、寿命)と、ヴェーダ(知識、智慧、科学)という2つの言葉が組み合わさり、アーユルヴェーダ(生命の科学、生命に関する知識)という言葉になります。

額にオイルなどを垂らすシローダーラは、アーユルヴェーダの中でもとりわけポピュラーな施術であり、アーユルヴェーダ=シローダーラというイメージが付いて回る部分もありますが、中国医学の中に鍼灸や漢方があるように、アーユルヴェーダ医学の中にシローダーラやアビヤンガ(全身オイルトリートメントのこと)などの施術があります。

WHO(世界保健機関)からも伝統医学として正式に認められており、世界四大伝統医学として、アーユルヴェーダ、中国医学、チベット医学、ユナニ医学があります。

アーユルヴェーダの目的は古典に明確に記載されており、「健康な人の健康を守り、病気の人の病気を鎮静すること」です。

医学といえば病気を治すことをイメージしますが、アーユルヴェーダがステキなところは、病気を正しく治療するだけでなく、健康な人の健康を守り増進するための予防医学の知識でもあること、そして、その人の心と魂が澄みわたっていて、喜びに満ちていてこそ健康であるとされていることです。

アーユルヴェーダの治療後には自然治癒力を復活させ、病院に来た時よりも元気になっているべきという考え方なのです。

最近何となく不調で、寝付きが悪いとか、肩こりがする、耳鳴りがする、やたら乾燥する、いつもしていたようにできないとか、自分にだけは明確に分かるけど病気とまでは言えない状態で病院に行ったとしましょう。

いろんな検査をしてもらっても、得られた結果データには異常がなく帰宅したのですが、気になる不調は続いていく、これが未病の状態です。

そんなとき、アーユルヴェーダを知っていると、自宅で、食事や生活を通して、すぐにできる養生法のアイデアが沢山あるため、病気になる前に自分でセルフケアすることができます。

病気がなければ健康で幸福なのでしょうか?アーユルヴェーダでは、病気がないというのは健康の証なのではなく、健康で幸せに満ちた寿命を生きていくためのひとつの条件なのです。

病気がなく、老化にも負けず若々しくて、心身共に積極的でイキイキしており、質の良い生活を送ることこそがアーユルヴェーダがいうところの健康で幸福な寿命なのです。

人生の4つの目的

では、人はなぜ健康で幸福な寿命を求めるのでしょうか?それは、「人生の4つの目的」を達成するために健康が必要だからです。そしてこれは私が生きていく上でとても大切にしていることです。

読者の中には、「私は何のためにこの世に生まれてきたのだろう?」「このままで生きていて良いのだろうか?」と疑問を抱いたことがある方がいらっしゃるかもしれません。

私も子供の頃からそんなことをよく考えていました。そんな素朴で深い疑問に対し、アーユルヴェーダは明確な答えを教えてくれます。

私たちの人生には4つの目的があります。

最初に、ダルマです。ダルマは義務や法と訳されますが、私たちの魂が持って生まれてきた使命を果たすこと、と解釈すると分かりやすいでしょう。

次に、アルタです。アルタは道徳に反することなく富や財を得ること、豊かさを体験することです。

次に、カーマです。カーマは願望を叶えること、愛を得ることです。

最後に、モークシャです。モークシャは解脱する、生まれ変わりから卒業することです。モークシャはヨーガのゴールでもあります。

これら4つの人生の目的を、互いに矛盾することなく、一つを得るときにもう一つが阻害されることがないよう注意をしながら、手に入れる努力をすることが大切です。

そしてまたこの順番も大切で、最初の「ダルマ/魂」の使命を果たしていたら、次の「アルタ/富や豊かさ」は自然と集まってきます。

その「富や豊かさ」を使って、次の「カーマ/様々な願望や愛」を成就させます。

そうして最初の3つの目的を矛盾することなく手に入れる努力をし、全てを得た時には最後のモークシャが自然と起こり、もはやこの世でやりたいこともなく、生まれ変わる理由もなく輪廻から卒業して解脱するということなのです。

これら4つの目的を達成するためには健康でなければならない。だからこそアーユルヴェーダを説くのだと古典に書かれています

また、私がステキだな~と思っているのが、アーユルヴェーダが賢人達の思いやりによってこの世にもたらされたということです。

「肉体を持つ人間の苦行、断食、学習、禁欲、誓戒、長寿の妨げとなるさまざまな病がこの世に現れたとき、得高き行いの大聖仙たちは、衆生に対する同情のゆえに、雪山の清らかな中腹に集まった」

太古の昔、この世には病気、苦しみ、悲しみなどもなく、人は数百歳もの寿命を生きて、誰もが互いを思い合って争いもなかった時代がありました。

しかし、時代の経過と共に少しずつ正義や道徳が廃れていき、人よりも良いものを望んだり、人よりも楽をしたいと考えたり、他人のものを欲しがったりして、怒りや憎しみなどを抱くことで精神に乱れが生じて、病気や苦しみが現れてきました。

そんな頃、より高い精神を持つために世俗を離れ、深い瞑想や厳しい修行を完成したシッダと呼ばれる聖者たちが人里離れた山の中に住んで修行を続けていました。

彼らは人々が苦しんでいることを知り、ヒマラヤの麓に集まって、どうすれば人々の病気を癒して苦しみから救うことができるのかを話し合う会議を開いたそうです。

そこで聖者たちは深い瞑想を行い、その瞑想の中で、ブラフマー神からその叡智を体得します。このように聖者たちの思いやりの心をきっかけにこの世にもたらされたのがアーユルヴェーダです。

このように、アーユルヴェーダには作者がいません。

それは創造されたり、作られたものではなく、すでに存在していた自然の摂理なのです。ブラフマー神が思い出した(気付きを得た)とされる叡智は、DNAのように脈々と受け継がれ、それを聖者たちが思い出したのだといわれています。

それは、私たちの中に初めから組み込まれている本能や自然治癒力のように自然なものなのです。

では、私たちの中にこの叡智を組み込んだのは誰なのでしょうか?

人々はそれを「神」「サムシンググレート」「大いなる宇宙の意思」などと表現します。アーユルヴェーダは、このような人知を超えた宇宙意思の存在を認めています。

体質を知る

古典にあるアーユルヴェーダの定義には「アーユルヴェーダとは、有益な人生・無益な人生・幸福な人生・不幸な人生・人生にとって有益なこと・人生にとって無益なこと、人生の長さ・人生そのものについて説かれるもののことをいう」とあります。

自分にとって有益なものを選び取るためには、自分にとって何が無益なものなのかを知っておく必要がありますよね。人生にとって何が必要で、何が不必要なのかを知るための判断基準として使えるのが、アーユルヴェーダの智慧です。

例えば、有名なテレビ番組や雑誌でヨーグルトが健康に良いと勧められていたとしましょう。

翌日にはスーパーでヨーグルトが売り切れて姿を消します。毎日ヨーグルトを食べ続けて3カ月、半年、1年も経った頃、「ヨーグルトのおかげで便秘が改善して調子が良いの!」と笑う人と、「何故か分からないけど、ずっと便秘でおまけに花粉症にもなっちゃって!」と泣く人がいます。同じヨーグルトを食べ続けた結果が出たわけですが、何が違っていたのでしょうか??

これは体質が違っていたため、違う結果が得られたのです。良い結果を得られた人の体質にはヨーグルトが合っていたのでその恩恵を受けられたのですが、悪い結果だった人の体質にヨーグルトは合わなかったので病気になってしまいました。

同じものを取っても、一人一人体質が違うので、結果が違ってくるのです。だからこそ、アーユルヴェーダでは自分の体質を知ることがとても重要になるのです。

今日何かが良いと言われれば、明日にはそれが悪いと言う人が現れ、日々増え続ける情報はコロコロと変化し続けます。

数千年も変わることなく時代を生き抜いてきたアーユルヴェーダで自分の体質を知っていれば、日々移り変わる雑多な情報に惑わされることがなくなります。

この情報は私の体質には合わないけれど、あなたの体質には合っているねと、自ら有益と無益を判断することができるようになるのです。

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アーユルヴェーダ・エステサロン&スクールRAMA代表 / AMAJ(アーユルヴェーダ・メディカル・アソシエイツ・ジャパン)副理事長 。アーユルヴェーダ・セラピスト、ヨーガ・セラピストとして、サロン以外にもヨガスタジオ、統合医療施設、美容サロン、整骨院、食品会社等などで、各種セミナーや基礎理論講座などを行っている。

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