【AGLAアーカイブス】アーユルヴェーダの基本・トリ・ドーシャ理論とは?

AGLAアーカイブス

心と体を調える女性のためのスピリチュアルメディア『AGLA』で、とくに人気の高かったコラムを再掲する「AGLAアーカイブス」。2020年1月13日公開記事『アーユルヴェーダで手に入れる、ほんとうの健康と幸せ(連載第三回)』』よりお届けします。

トリ・ドーシャ

今回はアーユルヴェーダにおける、私たちの体質の定義についてお話しいたします。

私たち現代人の生活は忙しく、「食べ」「排泄し」「仕事をし」「体を動かし」「遊び」「寝る」などを毎日繰り返しながら、自分の心や体の状態をしっかりと意識することがあまりないのかもしれません。

あまり多くの食事をとらないのにすぐに太る人がいれば、大食漢なのに太りにくい人がいます。冬になると手足が冷蔵庫にあったかのように冷える人がいれば、真冬でもすぐに汗をかいてアイスクリームなどの冷たい飲食物を食べたがる人がいます。肌がカサカサに乾燥してひび割れている人がいれば、常にオイリーで肌がテカテカと光っている人がいます。体質が違えば、表れてくる特徴が違ってきます。

アーユルヴェーダでは、物質や現象の基礎に、目に見えないエネルギーが働いているとしています。そのエネルギーは、1日の時間、季節、人生における年齢などを通して常に変動しています。

アーユルヴェーダにおいて私たちの体の基礎となっているのはドーシャという3つのエネルギーで、トリ・ドーシャと呼ばれています。

“トリ”はサンスクリット語で“3”の意味であり、トリオ(3人)の語源でもあります。

ドーシャには「病素」「乱すもの」「増えやすいもの」などの意味がありますが、ドーシャがバランスを失うと病気の元となり、ドーシャのバランスが取れていれば健康の元にもなるのです。

これらトリ・ドーシャ理論はアーユルヴェーダのとても重要な原則の1つであり、独特の体質論でもあります。

3つのドーシャ(トリ・ドーシャ)

ヴァータ 風のエネルギー
ピッタ 火のエネルギー
カファ(カパとも発音) 水のエネルギー

五大元素

体質の話を始める前に、ドーシャの元となる五大元素が持つ性質について知っておくと、ドーシャと体質を理解しやすくなります。

アーユルヴェーダでは、私たち人間を含め、宇宙に存在しているもの全ては五大元素(空・風・火・水・地)から出来ているとしています。物質には必ず性質があり、性質があるものは物質であり、それらは切っても切れない関係にあります。

“空”は空間のことです。宇宙にも小さな原子の中にも、私たちの体内にも口や肺の中のように多くの空間があります。“空”は、偏在、微細、清澄、軽い、柔らかい、滑らか、などの性質を持っています。

“風”は動きのことです。宇宙にある星々は動いていますし、私たちの心臓や血液、胃腸や神経にも動きがあります。“風”は、動く、軽い、速い、粗い、乾く、冷たい、不安定、などの性質を持っています。

“火”は燃焼・変換する力のことです。何でも燃焼させる太陽の熱や、体の中で言えば代謝機能です。食べたものを消化吸収する力、体温を生む力、情報の代謝という点で物事を理解する知性も火の働きです。“火”は、熱、鋭い、軽い、変化させる、速い、輝く、などの性質を持っています。

“水”は結合する力のことです。お団子を作ったことがありますか?粉だけでは固まりませんが、水を混ぜるとお団子を作ることができます。万物は水の結合力によって一定の形を保っています。

血漿、リンパ液、細胞内の水など、人体の約7割は液体です。“水”は、冷たい、重い、柔らかい、滑らか、ゆっくり流動する、結合させる、粘、などの性質を持っています。

“地”は固体や構造のことです。太陽系を構成している太陽や惑星、原子を構成している陽子・中性子・電子。人体を構成しているのは骨、筋肉、皮膚などです。“地”は、重い、荒い、硬い、安定、緩慢、緻密、などの性質を持っています。

五大元素は、空・風・火・水・地の順番で宇宙に創造され、宇宙も人間も含め万物はこれら五大元素の組み合わせによって出来ています。

ヴァータ

五大元素のうち、主に風と空が組み合わさることでヴァータというエネルギーが出来ました。風と空それぞれが持つ、軽い、冷たい、動く、速い、乾く、などの性質を持つ運動のエネルギーです。

体内では、動きに関すること全てを司っており、心臓や手足などの動き、血液の循環、呼吸機能、食べた栄養素を全身へ運ぶ、栄養素を吸収する、老廃物を外へ出す、情報を伝達するなどといった役割を果たしています。

ヴァータのエネルギーが多い人は、風と空が持っている性質をよく表した特徴を持つことになります。

身体的には、手足が細くて長い、華奢で痩せている、肌は冷たく乾燥している、身長は高いか低い、骨格がはっきりしていて血管が浮き出ている、関節が目立ちポキポキ鳴る、髪は硬く乾燥している、目がキョロキョロとよく動く、歯並びが悪い、などの特徴があります。

ヴァータのエネルギーのバランスが取れていると、活発で行動が早い、社交的で明るい、アイデアに溢れている、想像力が豊かです。しかしヴァータのバランスが崩れると、不眠や便秘になったり、体が冷えて、肩こりや腰痛などといった体の痛みが起こってきます。

心理的には、緊張しやすく、不安が強くなり、気分が変わりやすく、衝動的で、浪費家、心配性になります。

ピッタ

主に火と水が組み合わさることでピッタというエネルギーが出来ました。火と水が持つ、熱、鋭、軽、流動、微油、などの性質を持つ燃焼・変換するエネルギーです。

体内では、食べた物を取り入れやすい形に変化させる消化、それを実際に吸収する、必要な状態に形を変える代謝の作用などを司ります。

さらに、情報の消化・吸収・代謝、すなわち情報を分析・仕分け、解釈し、新たに組み立てることも、ピッタの重要な働きであり、変化を促す酵素類もピッタの働きと考えられています。

ピッタのエネルギーが多い人は、主に火(と水)が持っている性質をよく表した特徴を持つことになります。

身体的には、中肉中背で筋肉質タイプ、肌は温かくて少し黄色みや赤み・輝きがある、筋肉や皮膚がしなやかで柔らかい、髪は細くて柔らかい、シミ・そばかす・ホクロが多い、目つきが鋭い、食欲旺盛、便は軟らかく下痢になりやすい、汗かき、などの特徴があります。

ピッタのエネルギーのバランスが取れていると、知的でリーダーシップがあり、正義感があり、信仰心があり、勇敢で機転が利きます。しかしピッタのバランスが崩れると、若禿や白髪になりやすく、口臭や体臭がきつくなり、皮膚炎などの炎症や発熱などが起こってきます。

心理的には、短気でイライラしやすく、批判的になり、完璧主義から敵を作りやすい傾向になります。

カファ

主に水と地が組み合わさることでカファというエネルギーが出来ました。水と地が持つ、重、冷、遅、油、安定、などの性質を持つ結合エネルギーです。

体内では、物と物を結びつけ、体力や栄養を与え、体を形成する役割を持っています。カファは物質的な構造をもたらすと同時に、感情を安定させ、愛情や慈悲、同情心、謙遜、忍耐、寛大さを与え心理的な安定をもたらします。

カファのエネルギーが多い人は、水と地が持っている性質をよく表した特徴を持つことになります。

身体的には、体格がよく太りやすい、肌は色白でしっとりしている、筋肉、関節が引き締まっている、髪は黒くて多く艶がある、目が大きくて潤いがある、行動がゆっくりしている、などの特徴があります。

カファのエネルギーのバランスが取れていると、グラマラスで魅力的、愛情深い、献身的、穏やか、辛抱強く、優しさがあります。

しかしカファのバランスが崩れると、いつも体が重く、いつでも眠くて、体が浮腫み、肥満となり、アレルギー症状が現れ、痰や鼻水などが出て、喘息や気管支炎などの呼吸器疾患が起こりやすくなってきます。

心理的には、何事にも執着し、執念深く、こだわりが強くなり、活動意欲が低下して、抑うつ状態になります。

私たちは皆、誰もがこの3つのドーシャ全てを持ち合わせています。ヴァータのエネルギーが多く、ピッタとカファのエネルギーが少ない場合は、ヴァータのエネルギーが優勢なヴァータ体質の人となります。

また、ピッタのエネルギーが多く、ヴァータとカファのエネルギーが少ない場合は、ピッタのエネルギーが優勢なピッタ体質の人となる訳です。

このように、どのドーシャが多くて、どれが少ないかなどのバランスによって一人一人の体質が違ってくるのです。

【参考資料】

AMAJスクール アーユルヴェーダ医師 田端瞳先生の講義資料より
「インドの生命科学アーユルヴェーダ」上馬塲和夫・西川眞知子著(農山漁村文化協会)
「インド伝承医学で健康に!アーユルヴェーダ入門」上馬塲和夫・西川眞知子著(地球丸)

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アーユルヴェーダ・エステサロン&スクールRAMA代表 / AMAJ(アーユルヴェーダ・メディカル・アソシエイツ・ジャパン)副理事長 。アーユルヴェーダ・セラピスト、ヨーガ・セラピストとして、サロン以外にもヨガスタジオ、統合医療施設、美容サロン、整骨院、食品会社等などで、各種セミナーや基礎理論講座などを行っている。

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