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【AGLAアーカイブス】マインドフルネス瞑想は疼痛(とうつう)の緩和に効果がある?〜 痛みの仕組みと種類 〜

AGLAアーカイブス

心と体を調える女性のためのスピリチュアルメディア『AGLA』で、とくに人気の高かったコラムを再掲する「AGLA アーカイブス」。2022年4月13日公開記事を加筆修正してお届けします。

アメリカ・ノースカロライナ州ウィンストン・セーラムにあるウェイク・フォレスト大学バプティスト医療センター(Wake Forest Baptist Medical Center)では、「瞑想」について興味深い研究・実験が行われています。

瞑想をしている人の「脳」が、「疼痛(とうつう)」つまり、「痛み」に対してどのように反応するかという研究・実験です。

「痛み」とは?

まず「痛み」とは何かということについて考えてみましょう。

痛みは、万国共通で人が最も避けて通りたい症状です。病気や怪我で感じる痛みは人を苦しめ、衰弱させます。

その痛みから逃れるために、多くの人は鎮痛剤に頼ることになりますが、薬の種類によっては中毒性があったり、副作用を伴うこともあります。また、この痛みを抑えるために多額の出費を強いられるという側面もあるでしょう。

世界中の人々が、今この瞬間も「痛み」に振り回され、悩まされているのです。

「痛み」というものを、専門的且つ、端的に説明をすれば以下のようになります。

組織の実質的あるいは潜在的な傷害に結びつくか、そのような傷害を表す言葉を使って表現される不快な感覚、情動体験(1994 世界疼痛学会)

『薬学用語解説』公益社団法人日本薬学会より


実際には、”組織の損傷”がなくても痛みが感じられたり、”組織の損傷”が治癒しているにも関わらず、痛みだけが長らく続くケースもあります。

「痛み」の種類

痛みには大きく分けて、以下の3種類があります。

①切り傷、擦り傷、火傷、打撲、骨折などの外傷的な痛み(侵害受容性疼痛)。

②頭痛など、見た目には傷や炎症などが見受けられず、何らかの原因により神経が障害されることで起こる痛み(神経障害性疼痛)。

③身体的な原因が不明なもので、精神的ストレスや社会的不安が原因と思われる心理的な痛み(心理性疼痛、心理社会的疼痛)。

これらの痛みはいずれも、身体への「警告信号」の役割を果たしています。

痛みを感じることで、身体に発生した損傷や異変に気付き、対処が可能となります。

痛みを感じる損傷した組織に刺激が加わると、末梢神経→脊髄→脳と痛みの情報(信号)が伝達されていきます。痛みとして感知する脳の部位は「大脳皮質(知覚野)」です。

瞑想が「痛み」に及ぼす影響

2015年、ウェイク・フォレスト大学バプティスト医療センターで、健康で身体のどの部位にも痛みを感じていない成人75人を募り、無作為に以下のグループに分けて実験が行われました。

◉「マインドフルネス瞑想を行なったグループ」
◉「プラセボ瞑想(見せかけの瞑想)を行なったグループ」
◉「プラセボ鎮痛クリーム(ワセリン)を塗布したグループ」
◉「対照群」

被験者の皮膚には、約50度の温度に達するように設定されたプローブ(測定や実験などに使用される被測定物に接触させる針状の器具)が付けられ、同時に脳をスキャンし痛みと、そのレベルを測定しました。

この結果、マインドフルネス瞑想を行なったグループは、痛みの強さが物理的に27%、感情的に44%減少したのです。

また、プラセボ鎮痛クリーム(ワセリン)を塗布したグループでは痛みの感覚が11%、感情面では13%減少したことが報告されています。

実験を前に、マインドフルネス瞑想と、プラセボ(偽薬)は脳の同じ領域が働き、痛みを軽減させる可能性があるとの見立てがされていましたが、結果は意外なものでした。

マインドフルネス瞑想では痛みをコントロールする「眼窩前頭皮質(OFC)」と「前帯状皮質(ACC)」が活性化することで痛みが軽減され、プラセボでは痛みを処理する領域である頭頂葉の「二次体性感覚野(S2)」の活動を低下させることで、痛みが軽減されていました。

眼窩前頭皮質はストレス耐性、前帯状皮質は情動に関わる痛みに関係しています。また、二次体性感覚野は、自身が物理的な刺激を受けていない状況、例えば人が注射を打たれている映像や写真を見ただけでも、この部位が活性化します。

片頭痛と瞑想

日本で片頭痛に苦しむ人の人口は800万人を超えるといわれており、圧倒的に30代〜40代の女性が多いという特徴があります。

読者の皆さんの中にも、片頭痛の悩みを抱えていらっしゃる方は多いでしょう。

同じく、ウェイク・フォレスト大学バプティスト医療センターの臨床実験では、マインドフルネス瞑想によるストレス低減法(Mindfulness-based stress reduction:MBSR)が片頭痛に対して有効であることが示されています。

実験では、片頭痛の病歴を持つ89人の成人が対象となります。

この89人を無作為に、MBSRを実践するグループと、頭痛に関する教育を受けるグループとに分けて行われました。

MBSRの実践グループは、それぞれの家庭で与えられた30分のカリキュラムを実践します。頭痛教育のグループは、頭痛の病態生理(頭痛になったときに、人の体ではどのようなことが起こり、それらを引き起こしている原因は何なのか)や治療に関する指導を受けました。

この両グループともに、実験中の片頭痛の報告は少ない傾向にありましたが、MBSRの実践グループの方が優位にQOL(Quality of Life)、抑うつスコア、情緒的幸福感を反映する測定値が改善し、その効果は36週間続きました。

アメリカでは、日本において市販薬には配合されていない麻薬性鎮痛薬オピオイドが片頭痛をはじめ、痛み止めとして常用されている実態があります(日本では主に癌による疼痛除痛に用いられる)。

昨年、アメリカで薬物による過剰摂取で亡くなった人は初めて10万人を超え、そのほとんどがオピオイドによるものだという報告があります。

様々な痛みを抱える人たちにとって、その過酷な痛みを抑える非薬物療法の新たな選択肢の登場は、朗報となるはずです。

痛みを感知する脳を再プログラムするという認知行動療法の一種である「疼痛再処理療法(Pain Reprocessing Therapy:PRT)」といった治療法も昨今注目を集めています。

そして、今回ご紹介した「瞑想」も、痛みを軽減させる方法として期待が寄せられているのです。

先にご紹介した実験では、参加した被験者は日頃健康で、とくに痛みを感じていない人々が対象であり、実際に慢性的な痛みを抱える人が対象ではありませんでした。

慢性疼痛に苦しんでいる人たちが対象となっても、同じような結果となるのかなど、今後の研究にも大いに注目したいと思います。

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