心と体を調える女性のためのスピリチュアルメディア『AGLA』で、とくに人気の高かったコラムを再掲する「AGLAアーカイブス」。2019年4月11日公開記事『四季に寄り添い、祈るように暮らす(連載第一回)』よりお届けします。
はじめまして。三浦奈々依です。
古の人は四季折々の花や草木を愛で、旬のものを味わい、自然そのものに宿る見えざる力を神と敬い祟め、「ありがたい」という感謝の心で生きていました。
私の連載『四季に寄り添い、祈るように暮らす』では、そんな昔ながらの日本の暮らし、文化、風習、四季の言の葉、神社仏閣等にまつわるお話をご紹介したいと思います。
また、長らくカラーセラピストとして活動する中で、色、香り、星学と、各界で活躍する素晴らしい友人たちと交流を深めてきました。
時には、友人たちの力もかりて、様々な角度からしあわせのアドバイスを。
何かと慌ただしい毎日。一杯のお茶にホッと一息つくような、癒しのひとときを皆さまにお届けできたらと思っています。
今日は第一回目ということで、まずは自己紹介をさせていただきます。
私は仙台のラジオ局で音楽番組のパーソナリティー、神社仏閣ライターとして活動しながら、イギリス生まれのカラーセラピー・オーラソーマのセラピストとして約18年にわたり、日本全国でセッションを行っています。
自然を愛で、その土地の神社で祈り、風土が育んだ美食を味わい、大好きなお酒を楽しむ。
「まるで、放浪者みたいな人生だよね」と、友人たちに言われますが、さまざまな場所を訪ね、番組、取材、セッションと、人と話すことがそのまま仕事になっているので、出会いを通じて感じること、学ぶことも多々あり、放浪者なだけにさまざまな土産話もあったりします。
不思議なご縁に導かれるようにして訪れた場所、開かれた扉もありました。
私の人生を変えた貴重な出会い。それは東日本大震災の後に訪れました。
振り返れば、2011年3月11日の夜。地上の明かりが消え、恐怖と不安を抱えながら満天の星空を見上げ、家までの道をひたすら歩き続けました。
震災翌日は神々しいまでの朝日が地上を照らし、生き残った多くの人が、朝日に向かって自然と手を合わせていたといいます。
東北に暮らす人間のひとりとして、あの日見た光景を一生忘れることはないでしょう。
「私にできることは何だろう」と真剣に考えました。
長年カラーセラピストとして仕事をする中で、「心のケア」の大切さを痛感していた私は、震災の翌年から、仙台の情報誌「Kappo」にて「心の復興」をテーマに、東北の神社仏閣を訪ね、神職の皆様に話を伺い、祈りの心を伝える『みちのく神様散歩』の連載を始めました。
震災から3年後の春、世界遺産・京都東寺で13年にわたり作品展を開催する仏画家・観瀾斎先生と書家の周玉先生のお力をおかりして、被災した東北の神社仏閣再建の一助となる四季の言の葉集『福を呼ぶ 四季みくじ』を執筆しましたが、私の体調不良がなければ、先生方と出会うことはなかったかもしれません。
震災が起こった2011年の夏。
仕事で四国を訪れました。弘法大師空海ゆかりの寺、四国善通寺を参拝。
その後、京都へ。そこで突如、激しい腹痛に襲われ、緊急入院することになったのです。
長年番組を担当させていただいた福島の地でボランティア活動を続けながら仕事をしていたので、思った以上に心も体も疲弊していたのだと思います。
通常の10倍にも跳ね上がった炎症の数値を見て、お医者様に「これじゃ、歩くのもさぞかし辛かったでしょうね。今日から一週間、絶飲食です」とぴしゃりと言われ、退院する頃には5キロも体重が落ちていました。
そして、退院後の秋。お礼参りを兼ねて再び善通寺を参拝し、京都を訪れました。その時初めて、空海ゆかりの寺、平安京最古の遺構である東寺へ。
そこで出会ったのが、作品展の準備にいらしていた観瀾斎先生と、書家の周玉先生でした。
観瀾斎先生が東北の復興を願い、一気に彫りあげた版画『阿吽の双龍』に心揺さぶられ、当時、原発事故の影響により多くの住民が避難していた二本松へ作品を寄贈するお手伝いをさせていただき、先生方の無償の協力により『福を呼ぶ 四季みくじ』を出版。
ご縁がさらなるご縁を呼び、毎月、空海の月命日である21日に東寺で行われている「お砂踏み」を京都外では初めて仙台に招聘。
「東北のために」という東寺僧侶の皆様のご尽力により、2014年春、鎮魂の祈りと復興の願いを込めて、「東寺お砂踏み」が開催され、多くの皆様にご来場いただきました。
また現在、東京国立博物館で開催されている特別展「国宝 東寺-空海と仏像曼荼羅」(~6月2日まで)取材の機会をいただき、立体曼荼羅に込めた空海の思いについて書かせていただきました。
先生方は私にとって京都の父と母。東寺は私にとって心の故郷のような場所です。
ご縁は天の采配。出会いには、「運命」ともいえる力が働いているのだと思います。
神職ではない私が、多くの神職様、神社仏閣とご縁をいただいて、「心の復興」を胸に、こうして記事を書かせていただいている不思議に心から感謝しています。
日本は言霊の幸ふ(さきわう)国
さて、京都東寺で生まれた四季の言の葉集『福を呼ぶ 四季みくじ』に収められている46の四季の言の葉。古の人々は森羅万象に神が宿っていると信じ、祈るように暮らしていました。
今に受け継がれる文化や風習、四季の言の葉には、変わらぬ日本の心が生きています。
日本は「言霊の幸ふ(さきわう)国」。
四季の言の葉に込められた古の人の思いに触れる時、ハッとさせられたり、ジーンとしたり、それぞれに感じる思いがあるでしょう。
眠る前に唱える幸せの呪文
第一回目の今日は、『福を呼ぶ 四季みくじ』の中で最もめでたいカード、「宝船」の幸せの呪文を皆さんにご紹介します。
「宝船」は大吉ならぬ、「鯛吉(たいきち)」カードです(笑)。
日本では、お正月や節分に1年の運勢を占う風習があり、中でも、初夢が良いか悪いかで、大人も子どもも一喜一憂していました。
「是が非でも縁起の良い夢が見たい!」という江戸の人々の願いから生まれたビジネスが、「おたから~、おたから~」と声を上げながら、宝船に乗った七福神の絵を売る「夢売り」。
日本の童謡詩人・金子みすゞは、「夢売り」を詩に詠んでいます。
年のはじめに夢売りは、
よい初夢を売りにくる。
たからの船に山のよう、
よい初夢を積んでくる。
そしてやさしい夢売りは、
夢の買えないうら町の、
さびしい子等(ら)のところへも、
だまって夢をおいてゆく。
この詩に登場するやさしい夢売りが、家々に売り歩く宝船の絵には、こんな回文が記されていました。
「なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな」
実は、これ。前から読んでも後ろから読んでも同じ読み方ができる回文。
~ 長い夜の深い眠りから覚めて、みな朝を迎える
宝船が、波を越え進んでいく音の、なんと心地良い夢だろう ~
読み人知らずのこの歌の解釈には諸説ありますが、このような意味があると言われています。
濁音がひとつもない回文は唱えてみるとなんとも心地よく、私はお正月に関係なく、気持ちが落ち込んだ夜に幸せの呪文のように唱えて眠りについています。
今夜にでも、ぜひ唱えてみて下さいね。
次回は、二十四節気、四季の言の葉をご紹介しながら、千年以上の時を超えて今に受け継がれる王朝ロマン、紫式部の『源氏物語』を色の観点から読み解いてみたいと思います。
世界最高の恋愛小説と称される物語に秘められた悲しみとは……。
新連載『四季に寄り添い、祈るように暮らす』
末永くよろしくお願いいたします。
福ふく
参考文献
酒井大岳『金子みすゞの詩』
山下恵子『二十四節気と七十二候の季節手帖』