栄養疫学者が勧める、健康的な睡眠に最適な食事とは?

健康一般

寝る前の食事が睡眠に影響することは、すでにご存知でしょう。

デザートと一緒にコーヒーを楽しんだ後、午前2時になってもまだ目が覚めていることに気づいたことがあるかもしれません。しかし、一日を通しての食事の選択が、夜の睡眠にも影響を与える可能性があることをご存知でしょうか?

実際、全般的な食事パターン睡眠の質に影響を与え、不眠症の一因となることを示す証拠は増えています。

私は栄養疫学者であり、食生活を集団レベルで調査し、それが健康にどのような影響を及ぼすかを調べる訓練を受けています。

米国では、睡眠の質が悪く不眠症閉塞性睡眠時無呼吸症候群(睡眠中に上気道がふさがり、呼吸が停止する状態)などの睡眠障害に苦しむ人の割合が多いのです。同時に、ほとんどのアメリカ人は脂肪分や加工食品を食べ過ぎ、食物繊維が足りず、野菜や果物を食べる量が少な過ぎます。

この2つの傾向が互いに因果関係があるかどうかを判断するのは難しいのですが、睡眠と食生活の関連性を指摘する研究は増え続けており、これらの関係の生物学的背景を示唆するものもあります。 

アメリカ人は食物繊維、新鮮な果物や野菜の摂取が少な過ぎる傾向にあります

食事と睡眠の質はどのように関連する?

私の同僚と私は、18歳以上のアメリカ人における睡眠と食事の関連性について、より深く理解したいと考えました。そこで、政府の「アメリカ人のための食生活指針」に従っている人は睡眠時間が長いかどうかを分析しました。

2011年から2016年にかけて収集された全国を代表する調査データセットを用いて、果物、野菜、豆類、全粒穀物を十分に摂取するなどの食事に関する推奨事項を守っていない人は、睡眠時間が短いことがわかったのです。

別の研究では、21歳から30歳の若年成人1,000人以上を追跡調査し、1日の果物や野菜の摂取量を増やすためのウェブベースの食事介入研究を実施しました。その結果、3ヵ月間にわたって果物と野菜の摂取量を増やした人は、睡眠の質が向上し、不眠症状が軽減したことが報告されました。

私のグループなどが米国外で実施した研究でも、全体的な食事パターンが健康的であるほど、睡眠の質が向上し、不眠症の症状が少ないことが示されています。具体的には、植物性食品、オリーブオイル、魚介類が豊富で、赤身肉と砂糖の添加が少ない地中海食抗炎症食などがあります。

これらは地中海式食事法に似ているが、フラボノイドのような食事中の特定の成分にさらに重点を置いています。フラボノイドは植物に存在する化合物のグループであり、血液中の炎症性バイオメーカーを低下させることが示されている。

食品と栄養素の分類

全体的な健康的な食事パターンの中にも、睡眠の質と関連する可能性のある食品や栄養素が数多く存在します。

例えば、脂ののった魚乳製品キウイフルーツタルトチェリー、イチゴやブルーベリーなどのベリー類の摂取は、睡眠の質を高めるという研究結果があります。これらの食品が睡眠に影響を与える一般的な経路のひとつは、脳の睡眠と覚醒のサイクルを調節する重要な物質であるメラトニンを摂取することです。

クルミやアーモンド、キウイやバナナなどの果物は、メラトニンの自然な供給源です。

豆類やオートミールのような食物繊維が豊富な食品や、特定のタンパク質源、特に鶏肉などのトリプトファンというアミノ酸を多く含む食品も、質の高い睡眠と関連しています。マグネシウムビタミンD鉄分オメガ3脂肪酸マンガンなど、有益と思われる栄養素もあります。サーモンのようないくつかの食べ物は、複数の栄養素の源です。

複雑な関係を解く

個々の食品や食事パターンに関する多くの研究で重要な注意点のひとつは、ほとんどの研究では関係の方向性を簡単に割り出すことができないということです。

つまり、食事が睡眠に影響した結果なのか、睡眠が食事に影響した結果なのかを知ることは困難です。現実には、健康的な食事が質の良い睡眠を促し、それがまた良い食習慣を強化するという循環的な関係である可能性が高いと見るべきでしょう。

観察研究では、年齢や経済状態などの交絡因子が、睡眠と食事の両方に重要な相関関係を持つ可能性もあります。

健康的な睡眠のために避けるべき食品

より良い睡眠を得るためには、睡眠を促進する食品の摂取量を増やすことを目指すだけでは必ずしも十分ではありません。睡眠に悪い影響を与える食品を避けることも重要です。

主な原因をいくつか挙げてみましょう。

ハンバーガーやフライドポテト、加工食品に含まれるような飽和脂肪酸は、睡眠を最も回復させるとされる徐波睡眠を減少させる可能性があります。

白いパンやパスタに含まれるような精製された炭水化物は、代謝が早いという特徴があります。夕食にこれらの食品を食べると、空腹で目が覚めてしまう可能性があります。

アルコールは睡眠の質を乱します。アルコールには鎮静作用があるため、最初は眠りにつきやすくなりますが、夜のはじめのレム睡眠(急速眼球運動)が短くなるため、睡眠パターンが乱れ、夜中に目が覚めることが多くなります。

カフェインは眠気を促すアデノシンというホルモンを阻害するため、寝る6時間前でも摂取すると入眠しにくくなります

カロリーの過剰摂取が続くと、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の最も強い予測因子のひとつである体重増加につながります。横隔膜や肺に負担がかかり、首やのどに脂肪がつくと気道が狭くなるからです。

興味深いことに、我々のグループは最近、食品や食品包装に含まれる農薬水銀フタル酸エステル(プラスチックの製造に使われる化学物質)などの有害物質が睡眠に影響を及ぼす可能性があることを明らかにしました。有害物質は健康な食品にも不健康な食品にも含まれる可能性があるため、この研究は、食品によっては睡眠に有益な成分と有害な成分が混在している可能性があることを示唆しています。

食事のタイミングと性別

睡眠研究の分野では「時間栄養学(Chrono-nutrition)」と呼ばれる食事のタイミングと一貫性も、健康的な食生活と良い睡眠との関連を説明するのに役立つ可能性が高いことがわかっています。

米国では、不規則な間食とは対照的に、定時の食事はより良い睡眠と関連しています。さらに、深夜の食事は一般的に、加工スナック菓子などの不健康な食品摂取と関連しており、より睡眠の断片化を引き起こす可能性があります。

このパズルの最後の非常に興味深い部分は、食事と睡眠の関連はしばしば性別によって異なるということです。例えば、健康的な食事パターンと不眠症状との関連は、女性の方が強いようです。その理由のひとつは、睡眠における性差かもしれません。特に、女性は男性よりも不眠症になりやすい傾向にあります。

快眠の鍵

総合的に考えると、睡眠を改善する魔法の食べ物や飲み物はひとつではありません。1日を通して全体的に健康的な食事パターンを心がけ、1日の早い時間に摂取するカロリーの割合を多くする方が良いでしょう。

そして、寝る前の2~3時間はカフェイン、アルコール、重い食事を避けることに加え、1日の最後の数時間は他の良い睡眠衛生習慣を取り入れるべきです。

これには、テクノロジーから離れること、光の照射を減らすこと、快適でリラックスできる睡眠環境を整えることなどが含まれます。さらに、十分な睡眠時間を確保し、就寝時刻と起床時刻を一定に保つことも重要です。

News Source

What’s the best diet for healthy sleep? A nutritional epidemiologist explains what food choices will help you get more restful z’s By Erica Jansen『THE CONVERSATION』

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