【オーストラリア研究】加齢にともなってどのくらいのタンパク質が必要になる?サプリメントは摂取するべき?

健康一般

50歳前後の女性なら、ソーシャルメディアやインフルエンサーから、中年期になるとタンパク質の必要量が劇的に増えるというアドバイスを目にしたことがあるかもしれません。そのようなアドバイスによると、体重70キロの女性は毎日約150グラムのタンパク質が必要だといいます。これは1個6グラムのゆで卵25個分に相当します。

それは正しいのでしょうか?

まず、タンパク質とは何か、どこから摂取するのかを見てみましょう。

タンパク質は、私たちの食生活に欠かせない栄養素です。私たちにエネルギーを供給し、筋肉、骨、軟部組織、ホルモン、酵素の修復や生成に使われます。動物性食品(乳製品、肉、卵)にはタンパク質が豊富に含まれています。パン、穀物、豆類などの植物性食品も貴重なタンパク源です。

しかし、年をとると必要量はどうなるのでしょうか。

年齢別の必要量は?

タンパク質の必要量は、さまざまなライフステージによって変化します。これは、特に赤ちゃんから青年期までの成長の変化を反映しています。年齢別の推定平均必要量は以下の通りです。

◉出生時の体重1kgあたりタンパク質1.43g

◉生後6~12ヶ月では、体重1kgあたり1.6g(タンパク質要求量が最も高くなる時期)

◉6~18歳では、体重1kgあたり0.92gから0.62gまで減少します。

成人になると、必要なタンパク質量は男女で異なりますが、これは女性に比べて男性の筋肉量が多いことを反映しています。

◉男性は体重1kgあたり0.68g、女性は体重1kgあたり0.6g。

オーストラリアの70歳以上の推奨量は、組織修復と筋肉維持の必要性の増加を反映しています。

◉男性は、体重1kgあたり0.86g。

◉女性は、体重1kgあたり0.75g。

体重70kgの男性では、1日当たり12.6gの差となります。体重70kgの女性なら、1日あたり10.5gの増量となります。牛乳300ml、チーズ60g、鶏肉35g、レンズ豆140g、パン3~4枚を追加摂取すれば、10gのタンパク質を追加できる。

70歳以上の人は、摂取量を増やす(体重1kgあたり1日0.94~1.3gまで)ことで、加齢に伴う筋肉量の減少(サルコペニアと呼ばれる)を抑えられるという証拠も出てきています。しかし、これには重りや伸縮性のあるバンドを使うなど、抵抗力を利用した運動を増やす必要があります。今のところ、国の栄養ガイドラインには含まれていません。

ワンポイント

日本人のタンパク質摂取推奨量は、18〜64歳の男性で1日65g65歳以上の男性は60g18歳以上の女性は一日50gとされています。

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」106〜126頁(推奨量は126頁参照)

中年期では?

つまり、中年期に高タンパク質を推奨するのは、加齢による筋肉の減少を防ぐためかもしれません。また、ホルモンの変化に伴う体重増加を防ぎたいという一般的な欲求の一部かもしれません。

中年女性のタンパク質摂取量に特化した研究は比較的少ない傾向にあります。

85,000人以上の中年看護師を対象とした2017年のある大規模観察研究(研究者が集団サンプルのパターンを探す)では、動物性タンパク質や総タンパク質ではなく、植物性タンパク質の摂取量が多いほど早期閉経の発生率が低いことがわかっています。

同じ女性グループの別の研究では、植物性タンパク質の摂取量が多いほど、虚弱(転倒、障害、入院、死亡のリスクが低いことを意味する)のリスクが低いことがわかりました。動物性タンパク質の摂取量が多いほど虚弱リスクが高くなりましたが、タンパク質の総摂取量には影響がありませんでした。

閉経後の女性103人を対象とした別の小規模な観察研究では、中年女性ではタンパク質摂取量が多いほど除脂肪体重が多いことがわかりました。しかし、介入研究(研究者が特定の変化を試す研究)では、閉経後期の女性において、除脂肪体重に対するタンパク質摂取量の増加の効果は示されませんでした。

除脂肪体重:体重から脂肪量を引いた重さのこと。

一部の研究者は、キロジュール(エネルギーと熱量の単位)の減少とともに、食事からのタンパク質摂取量を増やすことで、更年期における体重増加を抑えることができると理論化しています。しかし、臨床試験では検証されていません。

タンパク質の摂取量を増やすと、満腹感が向上し、体重の減少や筋肉量の維持につながる可能性があります。満腹感を向上させるためのタンパク質摂取量は、体重1kgあたり1日1.0~1.6g程度とされています。しかし、このような研究は中年女性に限ったものではなく、すべての年齢層、男女を対象としています。

私たちは実際に何を食べているのか?

タンパク質の1日平均摂取量を調べてみると、70歳未満のオーストラリア人の99%が食事から必要なタンパク質を摂取していることがわかります。つまり、ほとんどの成人はサプリメントを必要としていないのです。

70歳以上の男性の14%、70歳以上の女性の4%だけが、推定平均タンパク質必要量を満たしていません。これには、全身の健康状態の低下、病気や怪我による食欲の減退、自炊能力の低下、動物性タンパク源のコストなど、さまざまな理由が考えられます。

サプリメントからタンパク質を増やすことは有益かもしれませんが、食品第一のアプローチを選ぶことが望ましいといえるでしょう。より身近でおいしいだけでなく、他の必須栄養素も含まれています。

例えば、赤身肉には鉄分と亜鉛が、魚にはオメガ3脂肪酸が、卵にはビタミンAとD、鉄分とオメガ3脂肪酸が、乳製品にはカルシウムが含まれています。

私たちにできること

タンパク質不足の症状には、筋肉の衰え、傷の治りの悪さ、浮腫(体液の蓄積)、貧血(血液が細胞に十分な酸素を供給できない状態)などがあります。

しかし、オーストラリアの平均的な食事に含まれるタンパク質の量は多いため、不足することはまれです。オーストラリアの食事ガイドラインには、栄養所要量を満たすバランスのとれた食事をするために、各食品群から必要な摂取量が記載されています。

体調不良や、スポーツをすることによる需要の増加、ヴィーガンやベジタリアンであることなどから、タンパク質の摂取量に不安がある場合は、かかりつけの医師や認定栄養士に相談してください。

News Source

How much protein do I need as I get older? And do I need supplements to get enough? By Evangeline Mantzioris『THE CONVERSATION』

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