心と体を調える女性のためのスピリチュアルメディア『AGLA』で、とくに人気の高かったコラムを再掲する「AGLAアーカイブス」。2020年8月14日公開記事『四季に寄り添い、祈るように暮らす(連載第六十一回)』よりお届けします。
お盆は地域によって日程が異なりますが、一般的には8月13日から8月16日までの4日間になります。
今年はコロナの影響で故郷へは帰らず、一人でせっせとキュウリ馬と、ナス牛を作りました。
「早く帰ってきて欲しい」という思いを込めてキュウリ馬。
「ゆっくり帰って下さいね」という願いを込めてナス牛。
妹が好きだったスイカの蝋燭も用意して準備万端。
16日の送り火を焚くまで、亡くなった大切な人はすぐそばにいますね。
今日は、お盆にまつわるお話です。
お盆のしつらい ろうそく
滋賀県の職人さんによる、手作りのろうそくをいただきました。
「色ろうそく 十色」。
お盆にろうそくは欠かせませんが、私がろうそくの魅力に目覚めたのは会津若松を旅した時のこと。
ふと入ったお店に菊や藤、牡丹などの草花の絵が描かれた絵ろうそくが置いてあったのです。絵ろうそくは会津の伝統工芸品です。
その歴史は、今から500年以上前に遡ります。
時の領主十一代芦名盛信公が漆樹の栽培を奨励。十八代盛隆公は織田信長公に千丁のろうそくを献上し、大変喜ばれたという記録も残されているそうです。
絵ろうそくのやわらかな光に、かの信長公も心癒されたに違いありません。
江戸期になると、ろうそくは美しく彩色され、将軍家や宮廷への献上品になりました。
絵ろうそくを作る職人は少なくなりながらも、その伝統は今に受け継がれています。
炎が消えにくく、ゆっくりと長く燃えるのは、ろうそくに使われている原料と芯の構造によるもの。
そして、職人さんが一本一本心を込めて丁寧に作っているから。
大きく揺らぎながら、静々と燃え続ける炎を見ていると、心が和らぎます。
絵ろうそくに火を灯し、亡くなった人とおしゃべりしてみませんか?
お盆に飾られる蓮の葉
先日、新潟で美しい蓮の花を眺めました。
早朝に花開き、四日目には短い命を終える蓮の花。
一枚、また一枚と花びらが散っていく様は、菩薩が慈悲の心に目覚めていく姿にたとえられます。
さて、お盆飾りは地域や宗教によって多少の違いはありますが、お供え物にはそれぞれに意味があるんですよ。
蓮の生葉に賽の目に切ったナスとキュウリにお米を混ぜて、水を含ませ盛りつける水の子には、ご先祖様はもちろん、お盆に帰ってくるすべての御霊に対しての供養の思いが込められています。
それは、生きているときに悪さをしてしまったため餓鬼道に落ちた餓鬼、無縁仏へのお供え。
餓鬼は喉が針ほどに細くて、食べ物を飲み込むことが出来ないと言います。
そのためいつも、飢え、乾きに苦しんでいるのです。
ナスやキュウリを細かく刻むのは、餓鬼でも飲み込みやすくするため。
水の子には餓鬼や、手を合わせてくれる人のいない無縁仏もお迎えし、もてなそうというやさしい気持ちが込められているのです。
忘れられないお盆
今から5年前、私は妹を病で亡くしました。
闘病中、ふたりで三春の滝桜で有名な福島の温泉宿で一週間ほど湯治をしたことがあります。
温泉につかる以外は、テレビのない部屋で本を読んだり、おしゃべりをしたり。
一見、不便な暮らしがなんと心地よかったことか。
山から昇る朝日を眺め深呼吸。夜は窓を開けて満天の星空を眺めました。
妹の死後、妹との思い出の曲、宮城県気仙沼出身のアーティスト、畠山美由紀さんの『オーバーザレインボー』と『ムーンリバー』を繰り返し聴いていた私。
今から3年前のお盆のことです。
親友と、その温泉宿へ出掛けました。
妹の思い出話をしていたら、外から『ムーンリバー』のメロディーが聴こえてくるではありませんか。
空耳かと思ったのですが、違いました。
驚いてフロントに電話をかけたら、「これは、戸別受信機の受信感度を確認してもらうために行うチャイム放送です。午後9時の音楽はムーンリバーなんですよ」、と。
妹と一週間滞在していた時は、何故か一度も耳にしたことはありませんでした。
不思議だなと思ったのですが、姿は見えなくてもつながっているんだなと思い、あたたかい気持ちに。
亡くなった大切な人は、きっと皆さんのそばにいます。
2020年、思い出に残るお盆を……