更年期と閉経期には少なくとも40の症状があります。これらの症状は、女性の日々の生活やウェルビーイングに深刻な影響を及ぼす可能性があり、だからこそ、タイムリーで効果的な治療を受けることが非常に重要なのです。
更年期障害の症状は、血管運動性、身体的、心理的などのカテゴリーに分類することができます。これらはすべて、主にエストロゲンとプロゲステロンといったホルモンレベルの低下によって起こります。
血管運動性とは、ほてりや寝汗のことです。
身体的なものとしては、ブレインフォグ（記憶力や集中力の問題）、膣の乾燥、睡眠障害、めまい、頭痛、関節痛、しびれ、皮膚のかゆみ、膀胱症状、尿路感染症などがあります。
また、心理的なものは、気分の落ち込みや不安感を指します。更年期障害は、骨が弱くなったり（骨粗鬆症）、心疾患を発症するリスクを高めることもあります。
これらの症状が女性の日常生活に深刻な影響を与えることを考えると、多くの人がホルモン補充療法（HRT）に頼ることになるでしょう。HRTは、症状に対処する最も効果的な方法と考えられており、英国国立医療技術評価機構（National Institute for Health and Care Excellence：Nice）によって、更年期障害の第一選択治療として推奨されています。HRTは減少するホルモンを補充する治療法です。
しかし2015年以降、Niceは、更年期障害の心理的症状（気分の落ち込みや不安など）を管理する上で、HRTとともに認知行動療法（CBT）が果たす役割も認めています。CBTは軽度のうつ病や不安障害に効果があることが知られているからです。
最近のNiceのガイドライン草案では、更年期に伴うほてり、寝汗、睡眠障害に対処するために、HRTの代わりに、あるいはHRTと並行してCBTを行うべきであると提言しています。
Niceがこの変更を推奨した主な理由のひとつは、女性に症状の管理方法についてより多くの選択肢を提供することにあります。すべての女性がHRTを希望するわけでも、できるわけでもありません。なぜなら、HRTは乳がんのリスクをわずかに高めると言われているからです。これは、年齢、HRTの種類、服用期間など多くの要因によるものです。
CBTを選択肢に含めるという決定は、一部の人が閉経期に経験する衰弱性の血管運動および睡眠の問題にうまく対処するのに役立つという証拠に基づいています。そのため、CBTはそのような身体的症状を治すことはできませんが (減少するホルモンを補うことはできないため) 、健康に関しては一部の人には役立つ可能性があります。
新しいガイドラインへの反発
これらの新しいガイドラインは、特に女性の健康状態に対するより良い治療を求める運動をしている人々から、かなりの反発を受けました。例えば、英国を拠点とする両親のためのフォーラムとニュースウェブサイトであるMumsnetの編集者は、この指針が女性の健康に有害であると主張し、この更新について辛辣なレビューを書きました。
彼らは、新ガイドラインによって、英国では医師がHRTの処方に消極的になるかもしれないと書いています。また、更年期障害の身体的な症状で心理療法を受けることはおろか、精神的な問題で心理療法を受けることも、英国ではすでに不可能に近いと指摘しています。
英国を代表する更年期障害の専門家であるルイーズ・ニューソン氏は、最近の記事で、Niceのガイドライン案は、骨粗鬆症、心血管疾患、糖尿病に対するHRTの多くの利点を強調することを怠り、代わりに古いタイプのHRTに関連するリスクに過度の焦点を当てていると書いています。
この新しいガイドラインは科学を歪曲し、ますます安全になっているHRTの使用から女性を遠ざける可能性がある、と他の批評家たちは言っています。
このガイドラインは、英国の女性たちが、適切な更年期障害サポート、特にHRTの選択肢を得る機会が限られていると感じている時に出されました。また、2002年のWomen’s Health Initiative（HRTの使用はプラス効果よりもマイナス効果の方が大きいと報告された）によって引き起こされたHRTのリスクに関する不当な恐怖が収まりつつある時期でもあります。
この決定を支持する人々は、CBTは女性に更年期症状の管理方法についてより多くの選択肢を与えるだろうと言います。しかし、このような治療選択肢の変更によって、大多数の女性にとって非常に安全で効果的なホルモン治療へのアクセスが減少したり遅れたりしないよう、私たちは警戒しなければなりません。
News Source
Menopause: why psychological therapy is now being recommended for hot flushes By Ciara McCabe『THE CONVERSATION』
